水滸伝(14)爪牙の章/北方謙三(単行本)。
矮脚虎と呼ばれる、脚の短いみっともない男・王英。
飛龍軍の大部分を指揮し、恩州に展開中。
手の届くはずのない海棠の花・扈三娘を思う。
晁蓋を暗殺した史文恭を見つけ出そうとするのは劉唐。
五千名を率いて、全国を飛び回る。
扈三娘が徐寧とともに、一千騎の調練をしに双頭山へ。
双頭山を守るのは董平。
闘ってみたいという童貫を評して、
「官軍だけでなく、梁山泊でも童貫を恐れている。
童貫に恐れられるなにかがあるとしたら、
戦が美しいものだと考えていることだろう。
美しさは残酷であり、同時に非凡でもある」
済州にいる裴宣に、
孫二娘が「好きですよ、裴宣様を」と、
いつしか恋仲になっており、結婚することに。
数いる豪傑のなか、裴宣の真面目さが際立つね。
晁蓋がいなくなって、二度目の正月が梁山泊に訪れる。
自分に頭領たる資格があるのかどうか、盧俊義に訪ねる宋江。
「私の、どこが頭領なのだ」
「自分はこれでいい、とどこまでも思わないところがだ」
北京大名府の軍、五千(囮)が北へ。
鮑旭の一千と扈三娘の騎馬隊が出動。
指揮官として育ってきた鮑旭。
林冲や、史進のような天声のひらめきはない。
しかし、ほんとうのことを見きわめようという粘り強さと、
冷静さがある。
その鮑旭が大胆な決断。
官軍の動きに気づき、扈三娘を宗城に急行させる。
実は官軍の狙いは、飛龍軍。
苦境の王英、楊林らは、鮑旭の決断に命を救われる。
そして、ここでも身を呈して扈三娘をかばい、
肩に矢を受ける王英。何度目か。
この二人。
悲運の恋の結末が待っていそうな感じですが、どうでしょう。
特に王英に。
南京応天府にいる張横、飛脚屋。張順の兄。
長男・張敬を梁山泊に行かせ、
盗難ぐせのある二男・張平を連れて旅に出ます。
開封府から北へ進路をとり、石梯山に。
石梯山は、威勝の叛乱への拠点。
李逵、武松のコンビが要塞を築いているところ。
盗みぐせのある張平は、
武松の小袋(小さな石がひとつ)に手をかける。
それが見つかって李逵に捕まった張平。
「李逵、その板斧で、私と平の首を刎ねてくれ」と、張横。
涙をながす張横・張平親子。
武松は「西へ行け」と。
子午山を目指すことになった張横と張平。
親として悩む張横に、
「なにも申されますな」と、ただ張平を預かる王進。
楊令は十二歳になっている。
なんか、こまごましたエピソードがあったこの親子。
これだけ語られるということは、まだ若い張平。
今後の主要キャラになるんでしょうか。
史進は、済州の妓楼にいる季端蘭にご執心。
闇の妓楼で青蓮寺の手によるものね。
そこで、鄒淵とともに襲われ(首謀者は蒼英)、
その騒ぎのなか、呂牛によって、柴進がさらわれそうに。
大事にはならなかったものの、
組織が大きくなるにつれ、脇が甘くなってきたのか梁山泊。
暗殺といえば、樊瑞。
袁明の命を狙い、それに手が届こうかという刹那。
袁明の影・洪青に打倒される樊瑞。
わけのわからぬまま侯健の手助けで梁山泊に逃げ帰りますが、
(この侯健の立ち位置がいまいち不明。
梁山泊の手のものとばれていながら、なお潜伏中)
樊瑞は、脾腹を打たれており、命は助からない。
「三日後に死ぬか、いま死ぬか選べ」という安道全に、
苦しんで三日生きることを選ぶ樊瑞。
ただ、自らに迫る死を見つめる。
死は、黒い穴のようなものだった。
覗きこんでもなにひとつない。ただの闇だ。
安道全に死について聞かれて、
「すべてがなくなる。それだけは、実感できるな」
やがて、死が訪れる。
死の足音だけを聞く、ここだろう。
はらりと落ちた樊瑞の命。
李袞の死から、死について考え、
暗殺を自らの使命とし、
最期は、静かに死を実感する。
石梯山では、傭兵として緑の軍袍で現れた張清。
飛礫の使い手。
生け捕りを試みる魯達たち。
たぶん、仲間になるんでしょう。
宋が全軍二十万で動き始める。
正攻法で、梁山泊を叩き潰す作戦。
流花寨、二竜山、双頭山の各所に大軍が押し寄せる。
五丈河では、三万を率いる趙安を、呼延灼、穆弘、項充が相手。
劉高が率いる四万の宋軍は穆弘が撃破。
主戦場は、流花寨へ。
双頭山の董平率いる四千五百に対して、
六万(真定府と大原府から)が攻め寄せる。
史進の遊撃隊も駆けつける。
長騎兵をはじめて試用。
あっさりと校医を破るなど、効果をあげる。
時を稼げ、というのが梁山泊からの命令。
二竜山には、董万の四万が押し寄せる。
全ての山を守るのは無理との判断。
解珍との話し合いで、
清風山を切り離すことを了承した燕順。
「いい人生だったよ」と、解珍を見送る。
退路を断って、清風山に籠る燕順。
董万は、清風山から二竜山に攻め入ろうと
八日におよぶ激しい締め付け。
兵の損耗を嫌う董万に対し、
山から大岩を落とした燕順。
その攻撃で死者四百。董万の怒り。
これが燕順の意地。最期の攻撃。
「ひとつ言っておく。ここは、俺の山だ」
清風山を占拠した董万だったが、
二竜山への道筋は塞がれいることを知る。
もう、志云々ではなくて、お互いの意地。
各所で防戦一方、緊迫した闘いが続き、息苦しい梁山泊。
童貫を引き出さないといけないので、
もう一泡ふかせる場面があると思うけど、あと五巻。
どういう敗者の美学が見られるのか。
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